ご来院の方へ:診療科のご案内

消化器内科

日本人は従来胃癌の罹患率が高く、また大腸癌については食の欧米化に伴い近年特に増加傾向にあります。 消化器内科では上部消化管(食道・胃・十二指腸)と下部消化管(大腸)を中心に、肝胆膵・小腸にいたるまで消化器系疾患全般の診断と治療を担当し早期発見・早期治療を心がけています。

内視鏡室では竹田副病院長、臼井健郎部長、嘱託非常勤等消化器内視鏡専門医3名、消化器内科専攻医1名が中心となり、またベテランの看護師達が皆様をサポートします。消化管造影検査は放射線科と協力して行なっています。当院は日本消化器内視鏡学会の指導施設であり内視鏡処置に積極的に取り組んでいます。

通常検査では苦痛の少ない経鼻・鎮静下上部内視鏡および鎮静下大腸内視鏡を標準的に行っており、上下部とも拡大観察・NBI・色素内視鏡など画像強調観察技術をルーチンに施行し、早期癌の質的診断・範囲診断能が向上しています。さらにカプセル内視鏡およびダブルバルーン内視鏡の導入後は小腸を含む全消化管の精査加療が可能になりました。

上部消化管内視鏡

上部消化管内視鏡検査は月曜日から金曜日まで毎日の午前中に行なっております。治療内視鏡については原則入院にて行なっており、ポリープや早期癌の切除、クリップや高周波凝固装置等による止血術、胃瘻造設術(PEG)やP交換、食道静脈瘤に対する内視鏡治療(EVL・EIS)、消化管狭窄に対するバルーン拡張術、薬のPTPシート誤飲など異物除去術などを行なっています。また最近では早期胃癌に対しては一定の条件内(ガイドライン内病変)であれば粘膜切開剥離術(ESD)も導入し内視鏡的に治癒を図っております。

早期胃癌の粘膜切開剥離術(ESD)の一例を示します。

1.胃癌(黄色破線内)を印(白点)で囲む

2.印の外側で切開を開始

3.全周の切開を終了

4.今度は剥離にうつります

5.腫瘍の切除終了

6.切除された早期胃癌(黄色破線内)

この他、ピロリ菌の診断・除菌治療も行なっておりますので気になる方はご相談ください。また嚥下外来・脳神経内科と連携した嚥下内視鏡等により専門的評価を踏まえた胃瘻増設も可能となりました。 

下部消化管内視鏡

下部消化管内視鏡検査は月・火・水・木・金曜日の午後に行なっています。検査だけであれば外来通院で可能ですが続けてポリープ切除術に移行した場合、症例によっては入院をお願いすることがあります。また前処置を含めた通院検査がご不安な方は前日入院の上での検査もお受けしています。

治療内視鏡は主にポリープ(粘膜内癌含む)切除術や、大腸癌等により発生した腸閉塞に対する経肛門的イレウス管挿入術を行なっています。また最近では早期大腸癌に対して、一定の条件内(ガイドライン内病変)であれば粘膜切開剥離術(ESD)も導入し内視鏡的に治癒を図っております(厚生労働省は2009年6月から、大腸腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を「先進医療」として承認し、当院は、2012年より大腸ESD認定施設に認可されております)。 この他に潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の治療も行なっておりますので御相談ください。

大腸ポリープ(粘膜内癌)の一例を示します。

1.赤い部分がポリープの成分です

2.茎が長く全貌を捕らえる事がやや困難です

3.茎の根元で切除のスネア(輪)を掛け切除します

4.切除した断面を確認

5.径18mmで一部に癌を含むポリープでした

この他に潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の治療も行なっておりますので御相談ください。

→内視鏡内科・胃がんリスク検診(ABC検診)

胆膵内視鏡

胆膵領域では人口の高齢化に伴い増加傾向にある胆膵系腫瘍・結石の鏡視下治療、および 胆嚢炎・胆管炎・膵炎・膵癌等に対する治療(ERCP、EST、胆管ステント、PTCD、PTGBD、PTADなど)を積極的に行っています。当院ではコンベックス型超音波内視鏡観測装置も導入し、これによりCH-EUS、エラストグラフィーに加えEUS-FNA・EUS下ステント留置術などいわゆる インターベンショナル EUSも設備的に可能となっております。

肝臓内科

平成20年6月より肝疾患専門医療機関に選定され、現在肝炎医療コーディネーター2名を擁しております。肝臓、胆嚢 の分野は、臼井部長が担当し ウイルス性・代謝性・自己免疫性の各種肝疾患、黄疸や肝硬変・肝癌・肝膿瘍・巨大肝嚢胞等の診断・治療が中心です(RFA、肝生検、TACE、肝動脈リザーバ、PTCD、PTGBD、PTADなど)。

肝臓領域では近年C型肝炎ウイルスに対するDAA(直接的抗ウイルス)製剤の登場により極めて効率的かつ安全にウイルス排除が得られ、疾病構造そのものに変化が起こりつつありますが、芦屋市内で当院のみ実施可能なソナゾイド造影USに加え、保険適応となった超音波による肝硬度測定が可能となり、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)など多数の肝疾患患者さんの専門的フォローに役立っています。また肝疾患専門医療機関として、各種ウイルス性肝疾患の肝炎治療医療費助成制度、肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業の申請登録や指定難病(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、特発性門脈圧亢進症、バッド・キアリ症候群)の申請登録・診療も芦屋市内では当院のみ可能です。肝移植、劇症肝炎など特殊な治療設備が必要な患者さんは大学病院など適切な施設に紹介しますが、B型慢性肝炎、脂肪肝、NASH、アルコール性肝障害、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変などほとんどの肝疾患診断治療については症例も多く幅広く対応しおります。 B型、C型慢性肝炎では肝癌の発生率が高く、定期的にエコー、CTをおこない肝癌の早期発見につとめています。早期であればラジオ波による焼灼(RFA)などを行い完治せしめます。 

主な肝疾患について解説します。

C型慢性肝炎

C型慢性肝炎はC型肝炎ウィルス(HCV)により引き起こされる慢性肝炎です。慢性肝炎から肝硬変に長期間かけ進展しその中から高率に肝癌が発生します。慢性肝炎自体の症状ははっきりしないことも多く、気がついたときには病状が相当進行していることも稀ではありません。感染経路は血液を介して(輸血、血液製剤など)のものが多いと定されていますが原因不明のこともよくあります。

治療としては近年では、副作用の多かったインターフェロン(IFN)に代わり、副作用がほとんどなく、駆除率95%以上を誇る 飲み薬による治療(DAA(直接的抗ウイルス)製剤)が中心となっています。高額なお薬でもあるため、治療にあたっては公費負担制度を利用することで月額自己負担1~2万円、2~3ヶ月間で治療が完遂できるようになっています。症状・検査値異常がなくてもHCVウイルスが居るだけで治療適応になりますので、お心当たりのある方はぜひ当科にお越しください。なおHCV完全排除後もあとから発がんするケースが少ないながらあり、年1~2回程度の通院検査をおすすめしています。

B型慢性肝炎

B型慢性肝炎はB型肝炎ウィルス(HBV)により引き起こされる慢性肝炎です。HBVはHCVより感染力が強く、感染経路は血液を介してのほかにも体液を介して感染します。HBVは成人に感染した場合、無症状に終わってしまうか急性肝炎を発症しますがまず慢性化しません。したがって多くのB型慢性肝炎の患者さんは出産時に母から感染(母子感染)したものと思われます。この場合子供の頃は肝炎を発症せず(無症候性キャリアー)、成人してから肝炎を発症します。うまくいけば自然経過で肝炎は沈静化しますが、長期間肝炎が継続(慢性肝炎)すると早い時期に肝硬変へ進展し、C型と同様肝癌が発生してきます。

従来はIFNやステロイド離脱療法、強ミノCなどで治療をしていましたが副作用が強い上に必ずしも有効でなく難渋しました。ところが近年、HBVに優れた効果を示す ラミブジン、アデフォビル、エンテカビル、テノホビル・アラフェナミド(TAF)などの抗ウィルス剤(核酸アナログ)が次々と開発され治療法が一変しています(公費負担制度あり)。HCVと異なり、HBV自体を完全に体内から消去する薬剤はまだありませんが、安全性の高い核酸アナログの継続内服により血液中にHBVがほとんどない状態を作り出せるため、肝癌・肝硬変の予防・治療となっています。

B型肝炎に関して患者さんに注意して頂きたい点を3つ挙げておきます

  • 無症候性キャリアーでも肝炎の再燃、肝癌の発生などの危険があるので生涯にわたり定期的に通院すること。
  • HBVを持っているかたは、ご両親ご兄弟についても検査してください。ご本人よりも病変が進行していることがあります。
  • HBVを持っているかたは、結婚する前に相手の方にHBワクチンを打つようしてください。

このような事案に関しても積極的にご相談に乗りますのでお心当たりのある方はぜひ当科にお越しください。 

脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)

いわゆる飽食の時代にあって、糖尿病、メタボリックシンドロームといった生活習慣に基づく疾患が注目を浴びていますが、その肝臓における表現型が脂肪肝でありまた近年その疾患概念が明らかにされたNASHです。脂肪肝は肝臓に脂肪が過剰に沈着し、肝障害をきたす状態です。原因は糖分の取りすぎなどにより肝細胞で脂肪の合成が亢進し、脂肪滴として蓄えられることにあります。単純な脂肪肝はダイエットすることによりかなり改善することができます。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の命名は飲酒をしていないにもかかわらず、あたかもアルコールを多飲することからくる脂肪性肝炎と非常によく似た病理所見を呈することからなされました。単純な脂肪肝から進展するものと考えられ、病態形成に酸化ストレスやオートファジーが関与するものと想定されていますがいまだ詳細は不明です。NASHは放置すると肝硬変に移行していきます。またそのなかから肝癌が発生する可能性も指摘されています。
診断ですが脂肪肝は腹部エコー検査が簡便ですが、そこに炎症が加わりNASHに至っているかは画像上診断容易ではありません。また血液検査でも単純な脂肪肝とNASHの鑑別は困難であり、肝硬度測定やfib4indexなどの非侵襲的評価法が発達した現在でも、最終的確定診断は肝生検でなされます。腹部エコー下の生検は原則2泊入院していただきますが、検査自体は30分もかからず、比較的安全に終了します。
治療としてはともにまず食事療法が重要です。肥満の患者さんでは減量が必要です。その上で改善が見られないときには薬物療法が考慮されますが効果が確率した薬剤はまだありません。当院では肝臓内科として定期的にフォローアップするとともに、糖尿・内分泌内科、栄養科と連携をとり適切な食事指導が受けられるよう努めています。

図1 単純な脂肪肝の組織像
白く小さな穴が開いたような部分が多く見られますが肝細胞内の脂肪滴の跡です

図2 NASHの組織像
肝細胞内の脂肪に加え、炎症反応、線維化(青く染色されている部分)、肝細胞の膨化といった所見がみられます
肝硬変に近い像です

肝癌

肝癌はC型慢性肝炎、B型慢性肝炎、NASH、アルコール性肝炎などが進行し肝硬変になると高率に発生します。肝癌の治療法は手術、血管造影を利用した塞栓術(TAE)、ラジオ波焼灼術(RFA)、分子標的薬(TKI:飲み薬)など種々あります。どの治療を選ぶかは患者さん個々の状態、腫瘍の個数、大きさな、脈管侵襲、肝外転移の有無などを考慮し決定されます。例えば10cmの癌があっても一個で肝臓の端にあり肝機能がよければ手術で確実に取り除くことが選択されますが、2cmの癌が5,6個肝臓の中に散らばっていれば手術は困難で一度に複数治療できるTAEを選択することになります(ただし根治性には欠けます)。
RFAは小さな癌であれば少ない侵襲で手術と同等の根治性が得られる事からここ10年間で一般化し、当院でも積極的に施行しています。RFAの原理は肝癌内にエコーで見ながら針を刺し、大腿に貼った電極のと間で電流を流すことにより針の周辺に熱を発生させ物理的に腫瘍を焼灼するものです。3cm程度であればまず完全に焼灼できます。約6分から12分の時間がかかりますがその間疼痛があれば鎮痛薬・医療用麻薬等でコントロールし患者さんに大きな負担がかから無いように心がけています。腫瘍があまり大きくなると難しくなるので、発癌の危険があらかじめわかっているC型肝炎、B型肝炎の患者さんには定期的に腹部エコーやCTを施行し早い段階で発見するようしています。

図1 RFAなど局所療法の概念

図2 RFAの原理と穿刺針

図3 治療前後のCT像
左の矢印で示す白く写っている肝癌が治療により周辺部分の正常肝を含み壊死しています

さらに詳しい情報はネット上にたくさんありますが、信頼できるサイトとして
日本肝臓病学会(http://www.jsh.or.jp)をあげておきます。

専門医・認定医・スタッフの紹介

竹田 晃(たけだ あきら)
役職 副病院長
診療局長
専門分野 消化器内科
内視鏡治療
炎症性腸疾患
資格 日本内科学会総合内科 専門医・指導医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本肝臓学会 専門医
日本がん治療認定医機構認定医・暫定教育医
日本医師会認定産業医
がん医療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
臨床研修指導医養成講習会受講済
嚥下機能評価研修会修了
日本消化管学会胃腸科専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医
日本カプセル内視鏡学会暫定専門医・指導医
日本プライマリ・ケア連合学会認定医
PEG・在宅医療研究会専門胃瘻造設医
難病指定医
プログラム責任者養成講習会修了
堀本 雅祥(ほりもと まさよし)
役職 消化器内科 部長
専門分野 肝・消化器内科
資格 日本消化器病学会専門医・指導医・近畿支部評議員
日本肝臓学会専門医・指導医・西部会評議員
日本消化器内視鏡学会・専門医・指導医
日本内科学会認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
インフェクションコントロールドクター(ICD)認定
日本医師会認定産業医
難病指定医(兵庫県)
日本抗加齢医学会専門医
嚥下機能評価研修会修了
臨床研修指導医講習会修了
がん医療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
がんのリハビリテーション研修修了
日本静脈経腸栄養学会・外科代謝栄養学会NST医師セミナー修了
臼井 健郎(うすい たけお)
役職 総合内科部長
専門分野 肝臓内科
消化器内科
資格 日本消化器病学会 専門医・指導医・支部評議員
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本内科学会 認定医・総合内科専門医・指導医
日本医師会認定産業医・生涯教育認定
日本肝臓学会 専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
がん医療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医
日本消化管学会胃腸科 認定医・専門医・指導医
厚労省臨床研修指導医
難病指定医(肝臓)
インフェクションコントロールドクター(I.C.D)認定
肝炎医療コーディネーター
日本化学療法学会抗菌化学療法認定医
貫野 知代(かんの ともよ)
役職 消化器内科 主任医長
専門分野 消化器内科
資格 日本内科学会認定内科医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器病学会専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
難病指定医
藤井 恭太郎(ふじい きょうたろう)
役職 消化器内科 副医長
専門分野 消化器内科
石井 久美子(いしい くみこ)
役職 非常勤医師
専門分野 消化器内科
資格 日本内科学会認定内科医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医