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事業管理者あいさつ

備えあれば

 2024年はとんでもない惨事で幕を開けました。元日に石川県能登半島を襲った大地震は、過疎地ゆえの情報不足もあり、日が経つにつれその被害の甚大さに衝撃を受けました。山道の多い道路は崖崩れや崩壊で寸断され、海に囲まれた半島で水上からのアクセスが可能かといえば、こちらも点在する港が破壊され、海底の隆起も重なって近寄れない状態です。多数の犠牲者を出した家屋の損壊も復旧どころか、片付けることもできず、行方不明者の捜索にも難儀しています。地震大国の日本では震災への備えは決して疎かではなかったはずですが、首都直下地震や南海トラフ巨大地震に目を奪われて、今回は裏をかかれたようです。あらためて「天災は忘れた頃にやって来る」「備えあれば憂いなし」を実感しました。

 「備えあれば憂いなし」を実践して見せたのが、正月2日の羽田空港の航空機衝突炎上事故です。日本航空の乗客・乗員379人全員が脱出し、命に別状なく、全世界から奇跡と賞賛されました。これは日本航空乗員が行っていた日頃の訓練の賜物に他ありません。世間に大きな教訓を与えてくれました。一方、衝突相手の地震救援物資を輸送中の海上保安庁機では尊い犠牲者が出ました。衝突原因については今後詳しく解明されると思いますが、現時点では管制塔とパイロットの間のコミュニケーション不足によるヒューマン・エラーと推測されています。報道されているように、複数のミスの積み重ねがこのような事故につながったとすれば、安全を第一とする医療現場の私達も以って「他山の石」としなければなりません。

 「To Err is Human(人は誰でも間違える)」は、米国医療の質委員会でも掲げています。人のエラーを少しでも減らし、安全で高度な医療を提供するためには医療ICT(情報通信技術)の活用が必須です。市立芦屋病院では現在実施中の経営強化プランの中で、新興感染症への対策などとともにICT化へも取り組んでいます。県内の医療施設ではいち早く電子処方箋を導入しました。マイナンバーカードを利用してのオンライン資格確認、近隣医療施設との患者情報ネットワークシステム「むこネット」「芦っこメディカルりんく」なども稼働しています。オンライン診療にも対応できます。AI(人工知能)を用いた放射線科画像診断支援や検体病理の画像診断支援あるいは生成AIの活用なども今後の課題です。

 芦屋市の中核病院として今後も市民の健康と生命を守るべく努力を続けます。

2024年4月
市立芦屋病院 事業管理者 
佐治 文隆

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