広報誌HOPE Plus

事業管理者のつぶやき

Chapter62. 安全を詠む

市立芦屋病院 事業管理者 佐治 文隆

日本語は五音節または七音節が歯切れ良く聞こえるためか、古来五七調や七五調で文章が構成されることが多々あります。和歌や俳句などの定型詩はこの典型ですし、近代では標語などにも口調が良いので採用されています。おなじ五七五でも川柳は俳句と異なり、季語を必要とせず、何となく取っつきやすいようです。私も新聞紙上で、「サラリーマン川柳」「脳トレ川柳」「万能川柳」などを愛読しています。芦屋病院の医療安全推進室が「医療安全」をテーマに川柳コンテストを企画し、職員を対象に作品を募集しました。柳名「管理亭 文々」で応募した拙作を紹介します。

おお恐い アクシデントで 木戸が開く

《コメント》 医療安全推進室のドア(木戸)が開いて出て来たのは?
(当院ジェネラル・リスク・マネージャーは木戸と申します)

二度とイヤ 患者誤認と ネズミ取り

《コメント》 免停は医師免許にもありますよ

ホスピタル あちらもこちらも 指差喚呼(しさかんこ) 

《コメント》 そう、安全の第一歩は指差し確認です

「おじいちゃん!」 おれはあんたの 祖父じゃねえ
「おばあちゃん!」 貴女わたしの 孫じゃない

《コメント》 院内でタメ口はやめましょうね

アイシテル ハグする前に 手洗いを

《コメント》 ノロウイルスは接触感染もします

レリゴーじゃ 転倒転落 防げない

《コメント》 ありのままでは患者さんは転びます
(レリゴー(Let It Goありのままに)は大ヒットしたアニメミュージカル「アナと雪の女王」の主題歌です)

医の安全 憲法解釈 変えません

《コメント》 個人を守るのに集団的自衛権は不要です

そのミスを 身内にされても 許せます?

《コメント》 常に患者さんの立場を忘れないで下さい

TPP(ティーピーピー) また新しい 検査かよ

《コメント》 CT、MRI、PET、USG・・・略字、英字が多すぎます
(TPP: Trans-Pacific Partnership、環太平洋パートナーシップ協定)

そのひとこと 患者・家族を 傷つける

《コメント》 口は災いの元、病人はナーバスです

目標は 誤薬ゼロです この病院

《コメント》 お薬の間違い、年間○○件と聞けば驚きます

多数の応募作のうち、以下の句がベスト・ファイブに選ばれました。
(カッコ内は作者です)

ミス芦屋 ミスしないのが ミス芦屋        (病棟看護師)

他人(ひと)の名を はいと答える 患者さん   (看護師長)

視覚よし 死角が見えず 資格とぶ         (病棟看護師)

したつもり やったつもりが 思い込み       (病棟看護師)

そのミスを 身内にされても 許せます?     (小生)

川柳の性質上、諧謔、揶揄を含んでいます。不適切な表現があればお許し下さい。

(2014.8.1)