名誉事業管理者(前事業管理者)のつぶやき
Chapter198.公園 NEW
市立芦屋病院名誉事業管理者 佐治 文隆
国立病院機構は百数十の病院群からなっていて、総合医学会を毎年開催して全職種に研究発表や研修の機会を提供しています。学会は全国を6ブロックに分け、各地区持ち回りで開かれますので、学会に参加すると各地を観光して食や文化を楽しむこともできます。前任の呉医療センターに勤務していた時代もそうでしたが、退任後も国立病院名誉院長会が学会に合わせて併催されますので、参加して来ました。2025年度は東海北陸グループの担当で、金沢市で開催されました。11月初旬の金沢は好天に恵まれ、さっそく兼六園へ散策に出かけました。水戸の偕楽園、岡山の後楽園とならぶ日本三大名園だけあって、広大な丘陵地帯にいくつもの池を配し、植栽を愛でながら回遊できます。紅葉にはまだ少し間がありましたが、それでも色づいた樹々が散見され、多数の観光客で賑わっていました。ご多分に漏れずインバウンドの外国人が目につきます。言葉を交わしたドイツ人夫妻は「日本サイコー!食べ物も美味し〜!」とご機嫌でした。園内霞ケ池の傍には 園を象徴する徽軫灯籠(ことじとうろう)がたたずみ、遠景に唐崎松を望みます。ちょうど冬に備えて「雪吊り」の準備が見られたのはラッキーでした。
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わが国の庭園・公園は、花鳥風月を愛する国民性も相俟って、築山、池、流れなどを配して、できるだけ自然に近い景観を生み出すように作られてきました。一方、洋風庭園は幾何学的な構成に加えて、人工的な彫像、噴水などを配置する特徴を持ちます。明治時代に洋館が建築されるようになり、これとともに西洋庭園も導入され、フランス式庭園、イギリス式庭園、さらに日本庭園との折衷式庭園なども作られています。神戸市月見山にはその西洋式庭園があります。もとは皇室の別荘で、太平洋戦争で焼失した旧武庫離宮(須磨離宮)を譲り受け、1967年に都市公園として整備されました。当時皇太子だった上皇と美智子様のご成婚記念事業のひとつでした。大阪湾を一望する開放的な庭園で、整然と並んだ噴水がリズミックに高さを変えて水を噴き上げ、周囲を四季折々に美しい花が色を添えます。なんといっても見ものはバラ園で、初夏には約180種4000株がいっせいに花をつけ、競い合って咲き誇ります。しかも2番花、三番花と四季咲きのバラを、春、夏、秋と何度も楽しむことができます。晩秋にも紅葉とバラの絶妙のコンビネーションを愛でられます。夜には噴水もライトアップされ、幻想的なスペースに変化します。近年は紅葉のシーズンにイルミネーションのイベントも開催されるようです。
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欧風庭園として開園した昭和42年頃は、純西洋風に造られた庭園は物珍しく、超おしゃれなスポットでした。友人のお姉さんから「離宮公園はなんでもないカップルが行っても恋人同士になるようなところよ」と聞いた私は、密かに想いをよせていた女性を誘って、出かけたことがあります。初来園だったのですが、なるほど広々とした空間に、明るく美しい花々、多数の噴水が噴き上げる水音など、別世界の趣でした。今のようにテーマパークなどない時代です。「やったー」と思って過ごしましたが、結果はどうだったでしょう。恋は成就しませんでした。それ以来、須磨離宮公園には足を踏み入れていません。
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昨年、半世紀ぶりに再会したその彼女に、「離宮公園に行ったね?」と尋ねたところ、「まったく覚えていない」と返ってきました。青春のほろ苦い思い出です。

(2026.1.1)