芦屋病院コラム
芦屋病院の入院から退院まで
入退院支援センター 原 克巳
1 入退院支援センターとは・・・
入院の予定が決まり「入院生活はどんな感じなのかな?」「入院して手術を受けたら、退院までどのような流れになるのかな?」と疑問に持たれると思います。
入退院支援センターでは、入院後の治療内容や生活状況をわかりやすく順序だてて説明しています。そうすることで患者さんご自身が入院生活や退院後の生活についても予測、準備がしやすくなります。
また治療に関する選択肢やリスクに対してどのように受止めておられるかうかがうことで治療への心構えもでき、疑問を解消することで医師との信頼関係を築くことにつながります。入退院支援センターでは、これまでにかかったご病気や現在の生活状態などを幅広く問診し、要介護者の方の場合はケアマネジャーと情報交換することで安心した入院生活を送ることできるようにサポートしています。
2. どのような方が入退院支援センターの説明を受けることができるのですか。
手術予定の婦人科・外科・整形外科(人工膝関節置換術)を受けられる方の対応を行っています。予定手術の94%の方に対応し2019年開設からの累計は3000人を超えました。患者さんお一人、お一人の個別性を考えた分かりやすい説明を心がけています。
3. いつ説明を受けることができるのでしょうか。
医師からの手術説明終了後に専門の看護師が対応しています。患者さんのご都合もうかがいながら待ち時間を利用してお話する場合もありますし、当日が難しい場合は次回の来院日に調整する場合もあります。
4. 何か準備しておくものがありますか。
何らかの処方を受けている方は、お薬手帳のご持参をお願いします。介護認定を受けている方は、担当のケアマネジャーの方の連絡先を教えていただけると助かります。
5. 具体的にどんなことをしていだけるのでしょうか。
具体的に行っていることは大きく分けて4つあります。それに加えて必要な患者さんには手術前の指導を行っています。

【栄養評価】
検査データや患者さんの日頃の食生活の状態をうかがって栄養状態を確認しています。
歯牙や誤嚥の有無、食事形態など実際のお食事の様子をうかがうことで、絶食期間や術後の動けない期間に問題はないか予測し多職種と共有し対応を検討しています。入院前から低栄養があれば医師とも相談して対応することで体力を保持しリハビリがすすみますし、傷の治りも順調となり安心して退院できます。
胃癌の手術を受ける方は、消化機能が低下しますので食事の内容や食べ方に工夫が必要です。入院前に好んでおられたメニューや食べ方などを栄養科と共有することで、患者さんの嗜好を踏まえた食事のポイントを説明してくれますので退院後の食生活への不安がないようにお手伝いしています。
【薬剤確認】
薬剤師と一緒に現在使用している薬剤を確認しています。健康食品やサプリも含めて中止薬などの注意事項を説明しています。薬を中止することを忘れないか不安な方には入退院支援センターが電話でサポートしています。内服の飲み忘れや飲み間違いなど退院後の生活で不安な点がないかも一緒に考えて病棟看護師へ引継ぎしていきますのでご安心ください。
【入院説明】
緊急連絡先を確認し、現在の病気の経過や既往歴を記載する用紙を一緒に作成しています。各種書類の記載も、ひとつひとつ説明しながら用紙にご署名をいただきますので自宅で沢山の書類を前に困ることはありません。
寝巻きのレンタルセットの利用に関しては、入院中の生活をイメージしてもらいながら必要かどうか参考になるように説明しています。些細なことでも遠慮無く聞いていただけるような関係作りを大切にしています。
入院のご案内に関するパンフレットを一読していただくことは大切ですが、入院前に知っておく方が良い所を中心に説明しています。多くの方が驚かれることは、「飲み物は各自で用意してください」という点です。病棟の給湯器や院内コンビニエンスストアのご利用について説明しています。しかし土・日・祝日に入院する場合は、コンビニエンスストアの営業時間が短いため実際に入院する日を元に患者さんと一緒に考えご提案をしています。
手術の内容や患者さんの健康状態によって手術前の注意事項は異なりますが、患者用クリニカルパス(入院中の流れ、工程表)を用いて、入院後に大切なところが分かるように強弱をつけて説明しています。
上記以外にも入院治療費の概算、高額療養費制度、生命保険請求を含む診断書関係の疑問についてもお答えしています。
【患者情報の整理】
入院前に診察するのは基本的に担当医と状況により麻酔科医師となります。それ以外のスタッフと会えるのは、当然のことながら入院してからとなります。例えば手術部の看護師は、麻酔のかかった患者様に最も近い存在として「肩が痛い」とか「補聴器がないと全く聞こえない」などありとあらゆる情報を収集して患者さんと一緒に手術に臨みます。日曜日入院の場合や入院当日が手術の場合は、手術日の午前中の訪問となります。限られた時間の訪問でも整理された情報があれば更に専門的な視点で状況を再確認し対応方法や対策を患者さんと一緒に考え安心した手術に繋げています。
入院する病棟の看護師にとっても情報整理のための時間を削減でき手術への不安や緊張を和らげて手術前の様々な準備のお手伝いをするのでご安心ください。
要介護者の方は、退院後の介護サービスの調整や退院後の療養先を検討する場合があります。入退院支援職員が入院前の生活や利用サービスの関連情報を元に入院時からサポートに入り患者さんやご家族としっかり相談して安心して退院できるようにしています。施設に入所中の方、地域支援者や訪問看護師の方がおられる場合は、直接その方たちとも連絡をとっていますので当院の医師が指示する内容を入院前も退院後も連携できるように準備しています。
【手術前の指導】
ご病気や手術の種類によっては、手術前の歯科衛生が必要となりますのでかかりつけの歯科医と連携し口腔内清掃をお願いしています。かかりつけの歯科医がない場合は、芦屋病院で院内開業を行っている山内歯科口腔外科をご紹介しています。山内歯科口腔外科の予約は患者さんのご都合を聞いて予約を取っていますので予約や診療で何度も病院に出向くご負担を軽減できていると思います。
基本的に手術の翌日にはベッドから離れて歩きます。手術後のリハビリがスムーズに行われるように患者さんの年齢や手術方法、呼吸機能の検査の結果も参考にして入院前に筋力のチェックやフレイル評価を受けていただけるように入退院支援センターが調整しています。
入院前に担当した理学療法士が、手術後もお部屋にうかがっており術前体操の説明や術後のリハビリがスムーズに行うことができるようにしています。高齢者の方でも手術後の運動能力の向上、早期離床に向けた準備ができるように医療チームが連携して皆様の対応をしていますのでご安心ください。