広報誌HOPE Plus

事業管理者のつぶやき

Chapter129.むかしむかし

市立芦屋病院事業管理者 佐治 文隆

「まんが日本昔ばなし」は1975年から20年間にわたって民放で全国放映されたTVアニメで、全話約1500話に及びます。放送終了後もローカル局やケーブルTVで散発的に放映されるなどした人気アニメです。昔ばなしやおとぎ話は各地の民話に題材をとっていて、「むかしむかし」で始まり、「あるところに」と続くのが定番です。川柳に「お話の むかしむかしは いつのこと」(ザンマインさん作)とありましたが、深く追求しないでおきましょう。もちろん「あるところに」も不問です。この作者にはまた「桃太郎 浦島太郎 金太郎」の作品もありますが、朝日新聞の「伝えたい日本昔話」のランキングに「鶴の恩返し」「浦島太郎」「桃太郎」がトップスリーで、以下「花咲かじい」「一寸法師」「猿カニ合戦」と続いています。毎日新聞の中畑流万能川柳(万柳)では「万柳じゃ いじられキャラの 桃太郎」も見かけましたし、誰もが知る昔話は川柳の格好のネタにもなりやすいようです。

英語の昔話もやはり「Once upon a time(ワンス・アポン・ア・タイム、むかしむかし)」から始まります。クエンティン・タランティーノ監督の映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」はレオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットが共演した作品で、今年のゴールデングローブ賞の作品賞ミュージカル/コメディ部門などを獲得しています。アカデミー賞では美術賞と助演男優賞(ブラッド・ピット)を受賞しました。1969年に起きたカルト集団マンソン一家による女優シャロン・テート殺害事件を背景にハリウッド映画界を描いていて、決して昔話ではありませんがヒッピーが流行した時代をノスタルジックに思い浮かべます。ハリウッド映画通を別にして作品自体の評価は賛否分かれるようですが、それなりの興行成績をあげたのはディカプリオとブラピという主役二人のおかげでしょうか。

1984年に公開されたセルジオ・レオーネ監督の遺作映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」は、禁酒法時代のニューヨークで育ったユダヤ系移民の二人のギャングを描いています。当初アメリカ公開時は評判が悪かったのですが、これは製作会社が都合で短縮・編集していたためで、のちに監督が編集した229分のオリジナル版が出て評価が一変し、ギャング映画の傑作の地位を得ました。229分版ののちにはさらに長い「レストア版」や「エクステンデッド版」が国際映画祭で公開されています。主役のヌードルスとマックスをそれぞれロバート・デ・ニーロとジェームズ・ウッズが演じ、1920年代から1968年までの彼らの少年期、青年期、成人期の友情、葛藤を描いています。

この「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」をミュージカル化してなんと宝塚歌劇で上演されることになり、熱心なヅカファンのお誘いで雪組公演を観にいきました。主役のヌードルスにトップスター望海風斗、その幼馴染で恋人の女優デボラにトップ娘役真彩希帆を配し、彩風咲奈、彩凪翔、朝美絢らが脇をかためます。何しろ原作は超長編なのでダイジェスト版になるのは否めませんが、その分ストーリーも判りやすく、大筋はギャングの抗争にもかかわらずタカラヅカらしくロマンチックなドラマになっています。なんといっても舞台に絢爛華麗なシーンが散りばめられていて、おきまりの大階段、羽飾り、ラインダンスも忘れず登場、サービス精神満点です。お正月にふさわしい華やかな一夜を楽しめました。

(2020.3.1)