広報誌HOPE Plus

事業管理者のつぶやき

Chapter12. マック

市立芦屋病院 事業管理者 佐治 文隆

ベルリンの壁の消滅に続いて、旧ソ連が崩壊した前と後に東欧のブルガリアを数回訪れました。共産圏の優等生であった時代のブルガリアでは、至る所に銃を構えた兵士が立っており、外国人の私たちもずいぶん緊張しました。商店も寂れていて、売る商品もほとんどないような有様でした。ソ連崩壊の波が東欧を席巻した後に訪れてまず感じたことは、街が明るく、人々が陽気に闊歩していることでした。そして、ハンバーガーのマクドナルド(McDonald)の赤と黄色のロゴマークが、東西冷戦集結後真っ先に入ってきた西側文明の象徴のようにあちこちに見られたことでした。

わが国でマクドナルドハンバーガーが、ケンタッキーフライドチキンやミスタードーナッツ等のアメリカン・ファーストフード(ジャンクフード?)として庶民に愛されるようになって久しくなります。ところが、その愛称が関東では「マック」、関西では「マクド」と異なることはご存じの通りです。日本の東西で異なる習慣に、エスカレーターの右立ちと左立ち等もありますが、これらの東西の境界線が何処にあるのか興味深いところです。

さて、「マック」と略されるもので有名なのは、コンピューターのマッキントッシュ(Macintosh)です。「Mac」や「Mc」の綴りで始まる姓(ファーストネーム)は「O'」で始まる姓(オブライエンO'Brien、オハラO'Haraなど)とともに、アイルランド人やアイルランド系アメリカ人の特徴として挙げられます。もともとゲール語であり、現在のアイリッシュ・ゲーリック(アイルランドの公用語)で「Mac」や「Mc」の接頭語は「○○の子孫」あるいは「○○の仲間」を意味します。「マッカーシー」「マクナマラ」「マクマホン」などの人名を懐かしく聞こえる方は、相応の年齢とお見受けしますが、いずれも血気盛んと言われるアイルランド系アメリカ人だったのですね。

ハンバーガーのマックと違って、コンピューターのマックは世界を席巻するにはほど遠い状態です。それでもマイクロソフト社のウインドウズが主流の業界で、アップル社のマッキントッシュは根強い人気があります。かく言う私もマックを使って原稿を書いています。アップル社のすごいところは、従来の常識的な発想を覆すような概念で次々と新製品を開発することでしょう。携帯音楽端末の「アイポッド(iPod)」は若者のあこがれの的となりましたし、高機能携帯端末「アイフォン(iPhone)」は携帯電話の世界を変えて、売り上げ昨年同期比50%増・純利益90%増とのことです。そこに今度は「アイパッド(iPad)」の誕生です。「アイパッド」の発売についてアップル社は強気一点張りで、日本ではインターネット通信販売の中止、特定店舗のみでの販売など、地域によっては入手できない県も生まれかねないようです。

アップル社が一部から反発も買うほど強気でいられるのは、他社製品との「差別化」であり、消費者に喜ばれる製品を提供しようとするポリシーが源流にあるからでしょう。改革途上の私たち芦屋病院でも、他病院と差別化出来る特徴を持ち、地域住民に喜ばれる医療を提供出来るよう「医療界のマック」を目指したいものです。病院新築工事も本格的に始まりました。ハード、ソフト両面で魅力的な病院の実現への第一歩です。

(2010.6.1)